前回の本欄では、都道府県ごとの“1人当たり”県民所得の格差に焦点を当てた。これに対して、各地域の1人当たり所得がさほど不平等でなくても、地域の発展の度合いが異なるなら、それ自体問題だという意見もある。都道府県ごとの1人当たりの所得にあまり違いがなくても、都道府県全体でみた所得に差がついているのであれば、人々が別の地域に移って、日本の中に、打ち捨てられた人口過疎の地域と過密に悩む地域ができつつあることを意味する。ふるさとを破壊し、狭いマンションに住むことが本当に幸福なのか。国土の「均衡ある発展」(もしくは中央から地方への所得移転)こそ政策の重要課題ではないか、という訳だ。このことの是非について議論する前に、まずは事実を見てみよう。 経済力格差は拡大しているが、バブル末期ほどではない 県民所得の格差について、今回は1人当たりではなく、都道府県ごとの総額で、「ジニ係数」と「上位5県/下位5県の比」を追ってみよう。下図で見るように、確かに格差は2002年以降、拡大しているようである。ここでジニ係数とは、都道府県の所得(今回は総額)が全く平等であればゼロ、不平等であれば1に近い数字を取る係数であり、数値が大きいほど不平等になる。上位5県/下位5県の比とは、所得(総額)が上位5県の平均額を下位5県の平均額で割った値である。ジニ係数も上位5県/下位5県の比も1990年から94年にかけて小さくなり(平等になり)、その後ほぼ横ばいだったが、2002年以降大きくなっている(不平等になっている)。ただし、不平等になっているといっても92年頃のレベルであり、90年に比べればまだ平等である。 2004年以降、どうなっているかが知りたいところだが、外為 、まだデータが公表されていない。しかし、有効求人倍率の不平等度が2004年以降横ばいになっているところを見ると(前回紹介した第一生命経済研究所・熊野英生氏「『いざなぎ越え』でも残る地域格差の理由」図表6、2006年10月24日)、さらに不平等になってはいないと思われる。有効求人倍率の不平等度が変わらなければ、人々は現在住んでいる地域をあまり移動せず、したがって県民所得全体の格差も拡大していないと推測できるからだ。 格差拡大の原因はやはり明確ではない この変化についても、政府投資を削減したから格差が拡大したという説がある。しかし、公共投資や政府消費の対GDP比と格差をみても、前回同様、そのワラント は明らかではない(前回の図を参照)。景気との関係も、景気後退期に格差が縮小している場合が多いものの、景気拡張期には拡大している場合も縮小している場合もあり、やはり明確ではない。
なぜ格差を縮小することが必要か 最初の命題に戻ろう。1人当たりの格差の拡大は、社会を不安定にするかもしれない。それがあまりに大きくなることは問題だろう。しかし、地域ごとの経済力格差の縮小はなぜ必要なのだろうか。 人々がより良い所得や就労機会を求めて移動するのはやむを得ないことだ。封建時代ではないのだから、人間を土地に縛り付けることはできない。また、無理やりに地域の産業を作ることはできないのは、北海道夕張市の破綻で明らかになったことだ。 以上の議論に対して、くりっく365 できる人間はいいが、移動できない高齢者はどうしたらよいのか、という反論が返ってくるかもしれない。しかし、年金制度が維持できていれば、高齢者はどこに住んでも所得を得ることができる。市町村の議員や公務員は移動できないが、だからこそ、地域の活性化のために働くのであって、彼らが本気になることを求められているということだ。 あるいは、人の集まる特定地域に不動産を持つ人々とそうでない人の格差が拡大することが問題だという意見があるかもしれない。しかし、その問題には、地価の上昇した土地に課税することで対処できる。 格差を問題にするなら、格差の有無や原因だけでなく、そもそもなぜ外為 を縮小することが必要かも議論するべきだろう。
日本経済は「失われた十年」を越えて復活しつつあるようだ。2002年度からの2005年度までの実質経済成長率は年平均2.4%で、2005年度には3.2%となった。年度の成長率が3%を超えたのは1990年度以来のことである。 日本経済がこのように復活したのは、企業が復活したからだと言われている。企業の利益は増大し、バブル期を超える利益を稼ぎ出している企業も多い。 実際、企業の利益率をROA(総資産利益率)でみると(下図)、季節性のあるデータをそのまま使っているので変動が大きいが、バブル期のレベルに近づいていることが分かる。利益を消費者物価で実質化した実質ROAで見れば、バブル期並みに回復していることはより明確である。 企業の利益率回復はなにゆえか この回復はなぜ生じたものだろうか。企業の利益は、(1)より魅力的な財・サービスを生み出すか、部品コストを削減して付加価値を上げる(2)付加価値のうちの利潤の取り分を増やす――ことによって増大する。ただし、部品コストは他の企業の付加価値なので、部品コストを引き下げても、企業部門全体としては付加価値を引き上げることにはならない。 ROAを式で示すと、 ROA=利益÷総資産 となる。 一方、利益は付加価値に、付加価値のうちの利潤の取り分を表す利潤分配率を掛けたものと表せる。すなわち、 利益=純付加価値×利潤分配率(=利益÷純付加価値) となる。なお、付加価値には通常、減価償却が入っているが、ここでは減価償却を除いた純付加価値で考えることにする。 以上からROAは、純付加価値に利潤分配率を掛けて、総資産で割ったものになる。式で表せば ROA=純付加価値×利潤分配率÷総資産 =(純付加価値÷総資産)×利潤分配率 となる。 ここで(純付加価値÷総資産)を純付加価値総資産比率と呼ぶことにするが、これは経営指標分析でよく使われる資本回転率(売上高÷総資産)に似た指標である。投下した資本でどれだけの付加価値を生み出しているか、すなわち、企業の資本効率がどれだけ高いかを表している。一方、利潤分配率は、労働と資本で生み出した純付加価値のうち、どれだけの割合を利潤として得たかという指標である。資本の代理人としての経営者が、どれだけ利潤の取り分を得たかである。以上のようにROAは、利潤分配率と純付加価値総資産比率とに分解することができる。
図にはROAとともに、利潤分配率と純付加価値総資産比率も示している。これを見ると明らかなように、純付加価値総資産比率はたいして上昇しておらず、利潤分配率のみが上昇していることが分かる。すなわち、ROAの回復は、企業が付加価値のうちのより多くの部分を利潤として得たことによるもので、投下資本当たりでより多くの付加価値を生み出すような革新がなされたわけではないことが分かる。上がったのは利潤分配率で、付加価値を引き上げるような経営革新がなされたわけではなかった。 では、なぜ利潤分配率が上がったのか。上がったというよりも、バブル以前の80年代前半の水準に戻ったというべきだろう。この理由についての多くのエコノミストの説明は、バブル崩壊後、企業がリストラに励んだからだというものだ。しかし私は、デフレが終わったからだと思う。 デフレになっても、日本的年功賃金制度の下では、名目賃金を下げることは難しい。名目賃金が年功で上がっていくことが制度的に組み込まれているからだ。物価が下がれば実質賃金はなおさら上がってしまう。売り上げは増えないのに名目賃金が上がれば、利潤分配率は下がってしまう。もし、バブル崩壊後も物価が安定的に上昇していれば、利潤分配率も低下していなかっただろうし、大したリストラも必要なかったろう。デフレによって長期の調整が必要となり、日本は「失われた十年」を経験することになったのだ。 デフレが終わり、利潤分配率が元に戻っていることで、私の説が正しいことが示されたと思っている。
歯科医師(しかいし)は、歯学に基づいて傷病の予防、診断および治療、そして公衆衛生の普及を責務とする医療従事者である。日本において、その職務等に関しては、歯科医師法により規定されている。業務独占資格および名称独占資格の医療資格である。
歴史 明治維新前:明治維新以前は、口歯科、口中科を専業にする医師がいて、口、喉、歯の治療をおこなっていた。世界的には紀元前2500年頃のものと推定される義歯がギーザから発掘されている。 明治維新後:1873年に「医制」が発布され、西洋を模範とした医療制度が整えられ始めた。「医制」により、医師になるには、医術開業試験を合格することが求められた。1875年、小幡英之助は第1回目の医術開業試験に「歯科」を専門に試験を申請し合格した。小幡は医籍4号をもって登録された。これは「歯科を専攻する医師として登録された」ということであるが、小幡が西洋歯科医学を専攻した先達であり、「歯科」という語を初めて用いたこともあり、日本で最初の(近代)歯科医師とされている。1883年、医籍とは別に歯科医籍が作られ、医師と歯科医師とは独立した、別個の存在となった。1906年、法律48号により歯科医師法が制定された。1942年、大戦中の医療体制確立のために、医師法と合わさって国民医療法となったが、歯科医師制度そのものに変化はなかった。戦後、国民医療法は、医師法、歯科医師法、医療法(医療機関について規定)にわかれ、現在に至る。
各国での歯科医師 日本:歯科医師 アメリカ:dentist、Doctor of Dental Surgery、Doctor of Dental Medicine ドイツ:zahnarzt 現在の日本では、原則として厚生労働省が指定した大学の歯学に関する正規の課程(歯学科、6年制)を卒業し、歯科医師国家試験に合格しなければ歯科医師になれない。したがって、歯科医師は学士(歯学)Bachelor of Dental Scienceである。 対して米国では、歯科医学校はすべて専門職大学院であり、卒業生はDoctor of Dental Surgery (DDS)の学位を得る。米国では全米統一の歯科医師試験が歯科医学校の卒業試験を兼ねるので、DDSは歯科医師と同義語である。このため日本の歯科医師も、アメリカではDDSと称することが多い。ここでDoctorというのは専門職学位としてのDoctorであり、学術上の学位(academic degree)のDoctorとは別物である(日本でも法科大学院を修了すると法務博士を得るが、学術上は修士扱いである)。 またハーバード大学歯科医学校(もとより専門職大学院である)など米国東部の一部の大学では、歴史的経緯からDoctor of Dental Medicine (DMD) の学位を授与している。つまり米国では歯科医学校を卒業(すなわち歯科医師試験に合格)すると、「DDS」「DMD」のどちらかの称号を与えられるが、両者の社会的評価に全く差はない。 ドイツでは、ドイツの歯科医師国家試験は4段階の試験が存在する。まず日本と同様に中等教育修了後に大学歯学部に進学でき、そこで約6年間の歯学教育を受けるが、歯学部での勉強と歯科医師国家試験は並行して行われ、歯科医師免許取得には歯学部で歯学教育を受ける必要があるが、卒業する必要はない。卒業には日本とは違い論文が必要であり、卒業試験ではない。その後、歯科医師の開業の許認可は州の委員会が判断する。しかし、封鎖地区では開業規制が強く実施されており、親子での権利移譲も認められてない。また、定年制を実施しており、医師同様の68歳で定年となる。私立の歯科大学は1校のみで、日本の産業医科大学と同様で、卒業後は産業界に就職することになっている。 なお「歯学博士」または「博士(歯学)」の英語訳はDoctor of Dental Science (DDSc) が近いが、DDSと混同されることが多いため「Ph.D」(Doctor of Philosophy)と訳すケースが多い。 しかしPh.Dは、ニュアンスとしては純粋な科学を修めたことを意味するため、適切ではない。米国でDDS PhDと表記すれば、歯科医学校を卒業しただけでなく、さらに生物など純粋科学の大学院を修了して博士(理学)を取得したようなニュアンスに取られると考えられる。米国ではDDSだけで充分な社会的評価が得られるので、さらにPhDを取るような回り道はしない(日本でも歯科医師が博士(理学)を取得するケースはそれほど多くはない)。これは、「医学博士」または「博士(医学)」取得者などでも見られる誤った使用法である。 ちなみに学士(歯学)の場合と同じ様に、「歯学博士」または「博士(歯学)」が必ず歯科医師とは限らない。歯学系大学院の博士課程、又は歯学部の研究室で複数の論文を発表し、歯学部大学院に博士号を申請し、大学院教授たちの審査で博士号を与えるにふさわしいとされれば、博士号を歯科医師でなくとも与えられる。 専門医制度をとる米国、欧州、英国歯科教育制度を採用してきた一部のアジア地区(シンガポール、香港など)では、口腔外科医、矯正歯科医、歯周病医などの教育として臨床医を育成する観点から2-3年制のマスターコース(修士課程)があり、MS,MSDの学位と専門医としての認定書が授与される。日本ではこの専門医制度が十分確立されない中で4年制の大学院が設置されているが、研究に重点をおき、本来の臨床専門医教育を目的とするカリキュラムが組まれていないのだ現実である。早急に臨床専門医教育と純粋科学を習得するPhDとは別途に考慮される事が世界の趨勢して妥当である(所謂グローバルスタンダード)。
日本の歯科医師制度と現状 歯科医師養成およびその後の一般的なスケジュール(卒後臨床研修は平成18年度より必須化)日本において歯科医師は、医師とは別の国家資格である。歯科医師となるには、歯科医師国家試験に合格しなければならない。時折、医学・医療系分野外の人々が誤解しているが、歯学部を卒業し学士(歯学)の称号を得ただけでは歯科医師になれない。 歯科医師国家試験の受験資格は、原則として大学において歯学の正規の課程を修めて卒業した者および卒業見込みの者(学士(歯学))に与えられる。正規の課程を卒業し、試験に合格し歯科医籍に登録をしたものは厚生労働大臣より歯科医師免許状が与えられ、これにより独立して歯科医業を行うことができる。また通常は、保険医登録も行うことが多い。 さらに医療機関(診療所、病院)の開設者になる(すなわち開業する)には、歯科医師免許取得後1年以上の卒後臨床研修を修了しなければならない。 歯科衛生士に認められている一部行為を除き、他者の指示に基づかず歯科医業を行うことが歯科医師のみに認められている。また、主に歯科医業を行う病院及び診療所の管理者も歯科医師が就くものと定められている。 現在、歯科医師免許に更新期限はなく、歯科医業停止・免許取消を医道審議会により決定されない限り生涯にわたって有効である。 歯科医師免許は、診療科ごとに交付されるものではない。その為、各診療分野の学会が学会認定医などの認定を行っている。これらは法的な拘束力を持つ資格ではないため、標榜科名(現在、歯科、歯科口腔外科、矯正歯科、小児歯科の4科が認められている)は自由に標榜できる。なお専門医資格は、各学会の専門医を持っていないと広告できない(医師の専門医標榜制度と異なる)。 また今日の日本では、歯科開業医の収支差額の平均値は1カ月当たり120万円程度となっており(厚労省の2005年医療経済実態調査より)、これを歯科医1人当たりの平均年収に直すと800万円になるが、高額所得者がいる一方で、5人に1人は年収300万円で、さらに20人に1人は申告所得が0円と格差が広がっている。歯科医師の育成には多額のお金が必要であり(歯科医の約7割を占める私立大学の平均的な学費は約3500万円、入学金だけでも1000万円程度要する。)、多大な先行投資などが必要であるにもかかわらずその平均年収は低下しており、経済的・平均的な視点から見る限りでは歯科医師の過剰・過当競争が起きており、ワーキングプアも数多く存在している。詳細は歯科医師過剰問題を参照のこと。
「医師」と「歯科医師」の業務上の関係 医者には医師と歯科医師の2つがあり、これらは職種が異なる。医師は医師法第17条に定める「医業」を行い、「歯科医師」は歯科医師法第17条に定める「歯科医業」を行う医者である。 「歯科医業」とは咬合構築に関与する行為(補綴、充填、矯正)、歯牙・顎骨・口腔粘膜・舌・唾液腺・咀嚼筋など下顔面に発生する疾患の治療、全身疾患のうち口腔に症状を現す疾患の機能回復訓練、などの行為をいう。 フランスやドイツでは、口腔顎顔面外科は医科の一分野として伝統的に発達しており、医師と歯科医師のダブルライセンスが前提条件となっている。米国においても次第に両ディグリーを取得することが流れとなりつつある。 一方、日本の口腔外科は、医師または歯科医師のシングルライセンスで支えられており、口腔外科の診療範囲は医師と歯科医師の共通のものである。もっとも、口腔外科は歯科医学の総合的な知識と臨床経験が必要とされる専門性の高い分野であることから歯科医師が主導的役割を演じ、伝統的に確立されてきた。 一般に歯科医師は、歯科疾患治療の必要上、あらゆる手段の模索を歯科専門職として許されているため、例えば顎骨の修復のための腸骨や腓骨、肩甲骨採取なども一部で行なわることがある。ただし、これら処置に際しては、全身麻酔や救急医療など、生命の危険性を相当程度伴うものが含まれているため、現実的には関連医科の医師と連携して治療を行うのが一般的である。 ただし、医師が医業として実施する口腔外科領域疾患の治療は、あくまで医科疾患の治療上、必要とみなされた場合に限られる。医師が歯科疾患治療のみを対象に、あるいは逆に、歯科医師が医科疾患治療のみを対象として、診療行為を反復継続的に行った場合には、それぞれ歯科医師法や医師法に違反することとなり、処罰の対象となる。とはいえ、その裁量範囲については、法的に明確な規定がないので、その曖昧さを払拭するため、未だに議論がなされている。 なお、患者が死亡した場合、医師は状況に応じて、死亡診断書と死体検案書の両方を作成することができる。これに対して歯科医師は、死亡診断書は作成できるが、医師と異なり死体検案書は作成することができない。
専門分野 歯科医師は、一般に齲蝕(むし歯)などの硬組織疾患を予防および治療する医療従事者と考えられているが、実際はそうではない。 歯科医師を大別すると下記のようになり、それぞれが連携あるいは跨って治療・研究を行っている。一部では、「歯科」というと歯一組織しか診ていないような印象を一般に受けることから、広く全身の健康増進・治療・予防という観点から「口腔科」、「口腔医」という名称を使用した方がよいとの意見もある(ただし現在、法的に口腔科・口腔医と標榜はできない)。 基礎医学および歯学を専門とする分野:口腔領域から全身領域における様々な基礎研究。医学部基礎医学系と類似するが、基本的に口腔内からのアプローチによる研究が主であり、また歯科疾患の主な原因である細菌学分野や歯科材料に関連する理工学分野が大きな位置を占めており、これらが医科との違いでもある。 硬組織疾患を専門とする分野:歯それ自体の疾患(むし歯など)を治療・予防する。 軟組織疾患を専門とする分野:歯周組織・舌の疾患(歯周病・舌癌など)を治療・予防する。 全身疾患を専門とする分野:例えば歯科麻酔科の救急医療や全身麻酔、歯科放射線科での全身疾患治療、歯周病科での口腔内微生物と全身疾患の関連研究など様々。